tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

良い規制が自由度と納得性を促進する

2020年10月24日 23時06分12秒 | 文化社会
社会経済思想と政治形態(試論):新自由主義と政治(11):補遺〔続〕
 「新自由主義と政治」のシリーズは、前回で終わるはずでしたが、偶々「自由と規制」の関係を解り易く教えてくれる良い事例が発生したので補遺の続きとして蛇足を付け加えたいと思います。

 アメリカの2人の大統領候補の直接討論が、いろいろごたごたもありましたが何とか2回行われました。
 一回目は、史上最悪の討論会と酷評されました。トランプさんは相手を「お前は駄目だ」と決めつけるのがお好きで、しかも相手の発言中に勝手に割込むので、まともな討論にはなりません。バイデンさんもいわば売り言葉に買い言葉で、結局「泥仕合」などとも言われました。

 勿論これでは、視聴する有権者もどちらを支持すべき判断もままなりません。というわけで、2回目は主催者側が異例のルールの導入を決めました。

 それがご承知の、テーマごとに各候補の発言の最初の2分間は相手候補のマイクを切る、というものでした。 
 その結果、トランプさんも、バイデンさんの発言の時には、黙って聞かざるを得なくなり、司会者の采配もスムーズになって、討論は順調に進んだのです。

 ですから、二回目の討論会では、双方の主張がしっかり聞けて、これなら討論会として成功という評価になり、メディアも「引き分け」だとか、テーマごとにそれぞれの分析をして論評をしています。
 司会者の捌き方も二回目では大変良かったと評価されたようです。

 では、何が変わって二回目の討論会は成功だったのでしょうか。答えは、「発言の最初の2分間、相手のマイクを切る」というルールを導入したから、というのが一致した意見のようです。

 考えてみれば、このルールは「相手が話すときは、あなたが口をはさんでも、聴衆には聞こえませんよ」という状態を「マイクを切る」ことで作り出し、イレギュラー発言が出ないようにするという大変厳しい「規制」です。

 つまり、この規制が大変良い規制だったために、発言者の発言の自由度は大きく増し、言うべきことは落ち着いて言え、両候補の意見陳述を確り聞きたいという視聴者の希望もきちんと叶えられることになったのでしょう。
 勿論、討論を取り仕切る司会者も、面倒なトラブルに巻き込まれる心配もなく、スムーズに会を進行でき高い評価いなったのでしょう。

 2回の討論会を比べてみて明らかになることは、適切な規制によって、言い換えれば、良いルールを決めれば、関係する多くの方々の自由と納得性が大きく促進されることを極めて端的に証明しているように思われるところです。

 自由と規制を対立概念として考えるばかりではなく、相互に補完することが可能な概念として巧みに活用するというのが人間の知恵なのではないかとつくづく感じる所です。

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